午前9時30分頃起床。

　枕元の棚が音響機器だという事に初めて気付く。昨日から微かに聞こえていた洋楽BGMは、ここから流れていたのか。



　上階のレストランにバイキングを食べに行く。川が見えるというウリのその場所であったが、どの方向を見ても何かしらが邪魔して見えやしねぇ。しかも、見える川自体が汚ねーし。

　バイキング、不味い。



　部屋に戻り、出立の準備をする。



　10時30分、出立。



　近くのセブン・イレブンで、少し大きめの水を買う。



　コタ・バルの街、散策。



　今回の旅の最終目的地である、プルフンティアン島に向かう事にする。中継地のクアラ・ブスゥまで、せっかくなので、バスを使う事にする。バス・ステーションで探す。



　受付に話をしてみるが、ココではない、との答え。そうか、と、尚も話を聞こうとしたら、後ろからベラベラ喋りまくってくるバカがいる。話が聞こえねーだろ、ボケ。只でさえリスニング苦手＆訛りが激しいのに、雑音入れてんじゃねーよ。

　余りにうるさいので、話を聞いてやる事にする。よく分からないが、バスはいくらで何分くらいかかって、タクシーだと云々、どっちを選ぶか君の自由だよって話だった(と思う)。んなこたぁ分かっている。というか、バスで行くつもりになってっからここで受付に話してんだろーがタコスケが。

　で、テメーはタクシードライバーなのか？と聞いたら、そうだ、という。結局そうかよ。



　面倒なので、乗ってやろうかな…と思ったが、こいつの英語が余りに聞きづらいのと、親切心なのかは知らぬが、茶々入れられて、バスに乗る気を無くしてしまった事に、余りに腹が立っていたので、少し迷ってしまう。

　すると、何故かもう一人の男が出てきて、私を最早己のタクシーに乗るものだと思い込んで説得している男のタクシーと思われる車のトランクを開けて、遠くから私を誘いまくってきた。



　余りの強引さに、件の車の方まで歩いていってしまったが、ちょっと待てよ、と。やっぱりてめーらムカつくよ、と。大体、人に選択肢を与えておきながら、何だコノヤロー。

　しかも、屋根付きの三輪車みてーなのに乗った爺さんが、人懐っこい笑顔で、三本指を立ててくる。3RMでいいよ、との事なんだろう。ひっきりなしに喋ってくるタクシーの二人といい、余りの人気振りに、憤怒の感情が浮き出た。



　と、いうわけで、やっぱりいいや、と、かなり強引に、つっけんどんに断り、別方向に歩き出す。最早バスで行く気は失せたので、タクシー・ステーションに行って、自分で拾おうと考える。



　早歩きでズンズン100mくらい歩くと、後ろの方から、「ボーイ！！」と叫ぶ声がする。振り返ると、先程の男だ。まだ追ってきやがる。そして、違う方向からは、これまた先程の爺さんが、3本指を突き立てて並走してきている。



　24の社会人に向かってボーイだと？爺さん、あんたの三輪車で何10kmも離れた街まで行けんのか？怒った私は、思わず「うぜぇ、失せろ！！」と叫ぶ…が、すぐ日本語だったと悟り、英語で「ノーサンキュー」と、言い直す。ただならぬ雰囲気に、訳が分からなかっただろうが、とにかく彼等は退散した。



　運ちゃんの溜り場のようなタクシー・ステーションに行く。クアラ・ブスゥまで行ってくれと頼む。ごにょごにょ相談した挙句、一人の男が指名され、乗れよとタクシーのドアを開けてくれた。40RMだという。



　タクシーで移動。4〜50分くらいで、クアラ・ブスゥに到着。時間は13時過ぎ。運ちゃんに金を払おうとするが、彼はそれを無視して、私を近くの建物に連れて行った。



　そこに居たオヤジが突然私にマレー訛りの英語で喋りまくってくる。何の事か分からず、目が点になる。「60RM払え」と「記帳に記入しろ」だけは分かった。

　タクシーの料金の事かと思ったので「40RMじゃねぇのか？」とか、今の私の状況を説明してみるが…相手が呆れ顔で、ガナリ返してくる。話から、ここが旅行会社だというのは分かったが…ますます何なのか分からぬ。周りの人間達は失笑している。言葉の通じぬ人間に対しての明らかな蔑視がそこには渦巻いていた。

　業を煮やしたのか、このオヤジは私の方に、一枚の券を差し出す。見てみると、島へのスピードボートの往復券だ。ようやく状況を理解する私。ここは旅行会社で、島の往復券が60RMで、それの購入と、その為の記帳を求められていたって事か。



　ブスっとしながら記帳する。周りの人間達は、尚、失笑している。唇を噛み締める。何を言っているのか分からない、というのは、本当に不幸な事だ。己の耳を引き千切ってやろうかと考えた程だ。



　記帳した後、渡航に際しての注意を言われる。何度も「大丈夫か？」と念押ししながら。そして、14時にここにもう一度来い、とも言われる。時間厳守だ、忘れるな、10分前には来い、と念押しされる。

　フンフンと聞き終えて、建物から出ようとすると、件の運ちゃんに金を請求される。勘違いさせやがってと、八つ当たりしようかと思ったが、そこは思い留まり、50RMを渡す。釣りを持ち合わしていなかったらしく、周りの人間に両替を求めて、くずした挙句、10RMを返してくれた。



　小一時間程余裕があるので、周辺をぶらりと散歩する。ガイドブックを読む。売店でプルフンティアン島の絵葉書を買う。



　周りには、スピードボート待ちの外国人がたくさんいる。欧米人カップル、ファミリーが多いようだ。日本人は皆無。

　しばらくブラブラした後、約束の時間の10分前に旅行会社に戻ると、欧米人夫婦がそこにいた。会社のオヤジが、私と同行の乗客だと教えてくれる。



　2時になった。が、出発する気配が見えない。



　5分過ぎた。まだ出発しない。オヤジは電話して、何事か怒鳴っている。



　さらに5分過ぎた。欧米人夫婦もソワソワしている。オヤジが彼等に渡航の説明をしている。彼等は余り聞き取れていなかったようで、何回か聞き返したりしている。彼等が何国人かは知らぬが、ネイティブにも分かり辛い英語だったのか、と、少しだけ救われた気になる。



　オヤジがボートの様子を見に行ったので、付いて行く。いつ出発か？と聞いたら、あと少し、との答え。給油をしているらしい。ま、この旅で時間通りにいった事など無いので、別に驚かないが、ね。

　ついでに、ブサール島に行きたいのだが、どうすれば良いか？と聞いてみる(プルフンティアン島は、ブサール島・クチル島の2島構成の島)。運転手に言えば大丈夫だ、との答え。



　ようやく乗船。出航する。

　券を渡す。その際、何処に泊まるのか？と聞かれる。最初質問がよく聞き取れなかったので、聞き流したが、同行者に聞いてやれと言っているのが聞こえたので、手助けは無用と、自分でテキトーにガイドブックの中からブサール島のホテルを選んで、「コーラルビュー」と答える。



　風を切るようで爽快。が、波に船体が頻繁にバウンドして、尻が痛い。同行者の夫婦は何だか幸せそうだ。何処から来たのか？など、簡単な質問をされる。



　30分くらいだろうか、島に着く。まずはクチル島に到着したらしく、同行者が、上陸用のボートに乗り換える。「いい旅を」「君もね」と会話を交わす。手を振って別れる。



　ブサール島に到着。上陸用ボートが来るまで、運転手と雑談。

　「サンキュー」と運転手と握手し、ボートを移り、上陸する。私が運転手に告げたホテルの前の浜だ。

　早速ホテルのフロントに「一晩泊まらせろ」と声を掛ける。クーラーが苦手なので、扇風機部屋でいいから、とだけ言ったら、案内する、と言われる。100RM払う。

　途中、私の足元をイグアナみたいなトカゲがのそのそ歩いていた。寝所に忍び込んで来ねーだろうな。

　なかなか良い雰囲気だ。シャレー・タイプのホテルというのは初体験だが、良い感じだ。

　案の定、思いっ切り山側にされた。海側にしろと言い忘れた。蚊が多いのかな、とは思ったが、部屋の内装はなかなか。重い荷物を早く降ろしたかったので、ここに決めてしまう。



　荷物を降ろし、また受付に戻る。海が見えるレストランがあったのを思い出したからだ。ついでに水も買う。

　なかなかいい眺めだ。昼食を注文しつつ、しばし海を見ながらボォーっとする。波の音が心地良い。



　御飯が来た。スパゲッティボロネーゼ大盛りと、中華の八宝菜のあんかけっぽいやつと、ライチのジュース。値段はいくらか忘れたが、内地よりやはり高い。

　早速食してみる…スパゲッティは並以下、あんかけは美味、ジュースは美味だがヌルイ。



　食事が終わった後も、少しボケッとするが、明るい内に写真を撮ろうと思い、立ち上がる。金を払い、愛機と共に砂浜に降り立つ。

　岩が多いな…ポイントを変えてみるか。しかし、綺麗な海だね。透き通っているよ。

　…う〜んイマイチだ。被写体はいいんだけど。対象が絞りにくい物を撮るのは難しいので、何かバシッとしたスポットは無いのだろうか？

　モーターボートか…私も乗りたいぞ。後でアクティビティにどんなのがあるか、調べてみるか。

　うん、いんじゃないかな。無難に纏められた気がする。んじゃ、戻ってアイスクリームでも食べながら、本でも読むか。



　先程のレストランに戻り、アイスを頼む。たっぷりサイズのフルーツのアイス。甘い物、大好き。美味々々。後で腹を壊さぬ事を祈る。



　読書の続きをする。黙々と読む…。周りの宿泊客も、読書をしている者が多い。とても静かな空間だ。



　…読了。旅にこの一巻しか持って来なかったのは、致命的なミスだったか。



　再び海を見ながら、ボォーっとする。この時の自分は、何も考えないようにしていたわけではなくて、何も考えないようになっていた、という感じ。

　日が落ちてきた。暗くなってきたな。時計を見ると、18時過ぎか。3時間くらいボケッとしていたのか。我ながら苦笑する。



　さらに暗くなってきた。レストランがライトアップし始める。机の卓上キャンドルにも火が灯る。

　なかなか美しい。こういう雰囲気、かなり好き。



　今日も疲れた。部屋に帰ってシャワーでも浴びようか。明日は海に入ってやろう。



　部屋に戻り、シャワーを浴びようと、蛇口を捻るが…ん？蛇口が一つしかない。おいおい、水シャワーかよ。やれやれ。



　部屋に戻り、床に入る。ドアの隙間から虫とか入って来れそうだが…いや、でも、部屋にそんな痕跡が無い。蚊も飛んでいない。案外大丈夫なのかもしれん。

　でも、せっかくなので、蚊取り線香を出してみるが…ライター買うの忘れた。



　風邪をひかぬように、扇風機さえ止めて、布団を被って寝る。明日はシュノーケリングをしよう。