7時に目が覚める。余りにも鶏のコケコッコーがやかまし過ぎる。

　布団を頭に被り、再度寝る。



　9時起床。体が痛い。

　どうやら、節々と肉が痛んでいるらしい。日焼けも痛む。



　宿を引き払う為、荷物をまとめる。蚊取り線香も片付ける。



　リュックを背負う。日焼けした肩に食い込んで、絶叫。

　外に出る。

　コタ・バルに帰る決心をする。



　宿屋のオヤジにグッドモーニング。帰る旨を伝える。チェックアウトも済ませる。クアラ・ブスゥまでのボートは、正午発だ。



　インターネットがあったので、やらせろと言う。10分程順番待ち。

　パソコンを開いてみるが、凄まじく遅い。しかも、日本語が文字化けして読めない。仕方が無いので英語のMSNを読む。マリオン=ジョーンズのドーピング再検査がシロだったと知る。安堵。



　飽きたので、20分程で止める。が、なんと16RMもボりやがった。どこまでもふざけとる。



　正午まで時間があるので、朝飯を食いに行く。コーンフレークを注文する。



　凄まじく不味い。ミルクは気持ち悪い程ぬるい。



　早々に立ち去る。



　空が曇っている。水も何となく濁っている。水位も上がっている。波も高い。昨晩の大雨のせいか。水位が上がっていて、波しぶきが少しかかる。昨日まで椅子と机が置いてあった場所が、海面になっている。

　ハンモックに揺られながら、ささくれだった海を見てボォーっとする。



　正午までまだ時間がある。宿屋のオヤジの傍に行き、会話をする。

　「マレーシアは初めてか？」

　「あぁ。」

　「クアラルン・プールへは行ったのか？」

　「空港だけね。」

　「(苦笑)」

　…まぁこんな調子で話していた。



　途中、いかつい黒人夫婦が、私のいた宿屋の隣の店の主人がいないので、私と会話していた例のオヤジに行方を聞いてきた。

　「あいつは何処行ったんだ？」

　「誰の事だ？」

　「昨日、ここで俺達にいいアクティビティ云々があるからどうだとか言ってた奴だ。今日参加しようかと思って来たんだが、いねーじゃねーか。」

　「あぁ、彼はいないよ。」

　「買い物か？」

　「いや、休日だ。」

　「休日だと？」

　失礼ながら、この辺りで私は大笑いしてしまった。黒人さんは、プンプンしながら歩いて行った。

　黒人さんが行ってしまった後、オヤジに思わず笑いながら喋りかける。

　「リゾート地の売店の主にも、休日があるのかね。」

　肩をすくめて苦笑いをするオヤジ。稼ぎ時なのにねぇ。



　正午の10分過ぎくらいに、島へのボートが浜の近くまで来る。いよいよこの島ともお別れだ。



　オヤジが運転するボートに乗り込み、島へのボートまで行く。



　どんどん離れて行くブサール島。少し切なくなった。故に、エンジンの音を押さえつけるような大声で、オヤジに怒鳴る。

　「昨日のシュノーケリングのせいで、私の骨も肉もボロボロになった。でも、とっても楽しかった。この島はすごく良かった。あなたにも感謝している。本当にありがとう。また、いつの日か、私はこの島に来たい。心からそう思っている。本当にありがとう！」

　オヤジは何度も笑顔で頷いてくれた。

　それだけでは足りず、私は離れていく島に向かって手を振りつつ、何度も怒鳴る。

　「さようなら、美しい島！！良い経験と思い出をありがとう！！！！」

　オヤジも嬌声を発しながらノッている。見ると、別に全然関係ない、その辺りでシュノーケリングをしていた欧米人の女性が、私の声に反応して、手を振り、さよーならーを連呼してきている。勘違いだが、いい絵ではないか。



　島へのスピードボートに乗り換える際、オヤジと握手。また来い、と。うんうん。



　クアラ・ブスゥへ出発。どーでもいーが、定員オーバーじゃねーのか？端の欧米人の荷物、何度も海に落ちかかっているんですけど。抑えるのも一苦労だろう。



　クアラ・ブスゥに到着。さっさとタクシーを探す。



　一人ウロウロしている運ちゃんがいたので、そいつにする。コタ・バルのステラ・インとかいうホテルまで乗せろ、と言う。

　ステラ・インの場所が分からないらしい。同僚にマレー語でゴニョゴニョ聞いている。分かったらしい。乗れよとの事。へいへい。45RMである(コタ・バルまで40RMで、ホテルまで5RMという事らしい)。



　すると、向こうから、若い欧米人夫婦が歩み寄ってきた。コタ・バルまで同じ行き先だから、同乗しようとの事。こちらは空港まで行きたいそうな。



　これに、タクシーの運ちゃんが難色を示した。行き先が違うというのだ。

　気の強そうな奥さんは、あなたに聞いてるんじゃない、と、運ちゃんを一蹴、私に尋ねてきた。勿論私に異論はない。



　が、運ちゃんは半ば意地になって、嫌だと繰り返し、何でダメなのか？という奥さんと怒鳴り合いに発展してしまった。旦那と私は、ただ呆然と見守っていた。うぜぇ。

　運ちゃんの言葉は、最早英語ではなく、マレー語が入り混じった意味不明な言語になっていた。



　見ると、手を振り、俺は行けないよ、というジェスチャーを繰り返すようになっている。さらに激昂する奥さん。焦れる私。元々先に話をつけたのは私なのだ。私まで乗れなくなってしまったら、少々面倒臭い。



　そして何をトチ狂ったのか、運ちゃんは我々3人に対して、3人とも40RMずつ払えば行ってやると逆ギレする始末。飽きれる私達。



　終にはいい加減諦めたのか、若夫婦は別のタクシーを探しに行ってしまった。去り際に、あなたのせいじゃないわ、と声を掛けられたが、ちょっと申し訳なかったかな。よく考えれば打開策などいくらでもあるし、もうちっと語学力があれば、せっかくの割り勘の機会をフイにする事もなかったのに。



　とにかく、コタ・バルへ戻る。



　ステラ・インとかいうホテルに着く。う〜ん…街の中心部からちょいと離れているな。

　中級ホテルなはずだが、そういう風には見えない。内装もかなり綺麗だし。



　チェックインする。150RM。



　部屋に入る。豪華。バックパッカーなら絶対泊まらんだろう。マレーシアらしさなぞ、欠片も見当たらぬ。まぁ、一日くらいこういう所に泊まっても良いだろう。



　荷物を放り出し、ベッドに寝転ぶ。しばし休む。



　再度、コタ・バルの街を散策する事にする。そろそろお土産を買っても良い頃だ。



　中心地まで遠い。このホテルを選んだのは失敗だった。ひーこら歩く。



　店を探すが、気の利いた物は売っていない。何故かFCバルセロナのTシャツはよく見たが…この国らしい物はバティック(伝統工芸の布製品)くらいか。しかし、別に欲しがる人など我が故国にはおるまい。

　しかし、多数の店が閉まっているのは、どういう事だ？中華料理屋といくつかの屋台やチェーン店、外産系の店ぐらいしか開いてねーじゃねーか。

　事情を聞いたら、そうか、モスクへ行って、祈っているのね。で、イスラム系の人がやっている店は実質休みか。金・土・日休みですか。ちくしょー、まだ島にいれば良かった。



　とにかくブラブラして、飯食ってホテルへ戻るかね。

　ホテルへ戻り、シャワーを浴びる。おぉ、湯が出るぞ。



　テレビで、アーセナルVSヴィジャ・レアルの試合がやっていたので、観る。でも、何か観た事あるな、と思ったら、前のチャンピオンズ・リーグの準決勝じゃねぇか。



　サッカー観戦の後、眠ろうとするが、なかなか寝付けない。仕方がないので、もう一度テレビを見る。サスペンス系の洋画がやっていたので、そのまま映画鑑賞。



　背中が痛い。咳も止まらない。薬を飲む。



　寝る。もう0時を回っている。明日はいよいよ帰国だ。